水堀 祭典親睦委員会(T-Backs)

一番觸の役割

 一番觸(一番町)について紹介します。

 祭組名・町名の由来は、見付宿の南西に位置し、西の木戸の東側の町であり、見付天神の祭礼に「一番觸」としての役割を担う町として「一番」という名がつけられています。 西区の中において触番の町内であることを町名で示しています。

 一番觸は見付28町内で鈴を振ることができる3町内の一つで西区梯団に属しています。

 祭りの運営は、一番觸保存会がすべてを運営しています。 その中で最も大事な準備が大祭で振る鈴(本坪鈴の真鍮製磨き上げ)の準備です(一番觸では鈴締めと言います)。 この鈴は、見付天神から毎年5対の新品を貰い受けます。

 新品の鈴はそのままでは大祭で振れないため一番觸独自に鈴吊鐶と鈴の帯(真ん中の少し膨らんだ部分)の加工を行います。 さらに鈴を振る柄の加工です。 桧材四方柾を約30センチの楕円形に加工し、両端を約4センチほどの鈴の鐶に差し込めるように丸く加工します。 これで鈴締めのできる準備ができます。 加工された鈴で鳴り音が同じもの同士の鈴を確認し、図の手順で鈴締めを行います。

 しかしながらこの鈴締めは、誰もが簡単に締められるわけではありません。 鈴を締める前に緩んでいたり、麻紐が緩んだり、途中で切れたり、さらに手は麻紐が食い込んで握力がなくなったりしてとても大変で、熟練した経験が必要となります。 従って、熟練者による技術の継承が必要であり、熟練者の指導の下に鈴締めの技術を次世代へ受継いでおります。 こんな苦労をして毎年20組程度の鈴を祭事始から毎晩保存会員によって作られています。 出来上がった鈴は、磨かれ、20組も会所の祭壇に並ぶと壮観です。

 そして、準備もでき祭3日前の浜垢離、御池の清祓い、そして御大祭です。

大祭日

 早朝より見付天神にて御神酒と榊を頂き、そのまま会所の祭壇に献上します。 朝一番で作成した鈴の柄の先端部の鈴吊鐶を下にして水に漬けます(鈴の中に水を入れないようにします)。 これは、鈴を桧の柄に麻紐で締めているため、水に浸すことによって桧が膨張し麻紐が水を吸収して締まるためです。 これを大人連出発まで数回繰り返します。

身支度

 身支度(褌、腹巻、足袋、腰蓑、草鞋、鉢巻)をすませて会所に集合します。 足袋は役持ちのため白足袋です。 練りの参加者の身支度を確認します。 特に祭組を示す鉢巻と触番の印である手首に巻く鈴印であります。 鈴印は誰でもが着けられるわけではありません。 一番觸保存会への活動、祭の準備および町内の行事への参加など祭だけでなく町民としての活動にも参加している者が着けられるのであります。

刻限触れ

 19時前後に西区梯団内の刻限触れ(挨拶回り)が開始されます。 一番觸は警固1名、青年部および一般参加者(中高生を含む)10名程が警固を先頭に「オイッショ、オイッショ」の掛け声で、元喬車、龍陣、梅社、水陣、玄社、根元車の順で会所へ向かいます。 なお、月松社(通称境松のお迎え)は刻限触れとは別に警固1名、青年部および一般参加者3名程で鈴を振りながらお迎えに行っています。

宵祭

 月松社に参加している者を除き、警固長、警固、青年部および一般参加者(中高生を含む)総勢30名弱が会所で身なりの確認、注意事項そして裸衆の顔合わせをします。 青年部は、一番觸として4つの項目を確認します。

  1. 西区梯団で鈴を振れるのは私たちだけである。この伝統を大切に守っていかなければならない。
  2. 鈴は練りをリードする。練りの中には鈴は常に1つ。警固によって鈴の交換、秩序の維持がされるが全員の協力が必要である。
  3. 鈴振りの厳守事項。
    1. 練りをリードする責任と気概をもって振る。
    2. 進行時は練りの先頭付近で、停止時は練りの中心付近で振る。
    3. 威勢、歯切れよく(気負わず、早すぎず)。
    4. 取り合いはしない(特に鈴の部分を持つと柄が折れるため)、必ず顔と渡す相手の手を確認して渡す。
    5. 警固の指示に従う。
  4. 堂入りは青年部の堂入りの役が、新調の鈴を警固(鈴の管理役)より受け、警固長の合図で堂入りする。

 確認が終了すると、見付天神からの御神酒を総代、警固長、警固、青年が頂きます。 警固長の合図で出発、準備した鈴を一斉に振りながら町内回りをして見付本通りに出る時刻を調整します。 町内回りの間に警固(鈴の管理役)は鳴りが悪い鈴を確認します。

 21時3分に警固長の合図で西之小路入口から「シャン、シャン、シャン」の鈴の音とともに見付本通りに出て、西光寺前に向かい、西区梯団の8町内が合流し、練りは総社(中の御宮)の社殿を巡回し、三本松御旅所を巡回し見付天神に向かいます。 後押し坂手前で、堂入りのため西区梯団の練りと一番觸の練りを分けながら練りは進み、白丁を着用した堂入り役は六ツ石で総代から新調の鈴の柄に「堂入り」と記された鈴を渡され、一番觸警固長の合図を待ちます。

堂入り

 西区梯団長は拝殿入り口で、23時の堂入り時間の合図をします。 これより、境松から次々堂入りし、最後に一番觸の堂入りとなります。 梯団長の合図を石段で待機している一番觸の警固長が確認し、堂入り役に提灯を大きく回してスタートを指示します。 堂入り役は両脇に警固を従え、「シャラ、シャラ」と細かく鈴を振って拝殿に走りこみます。 その後ろから一番觸の裸衆が堂入りを果たします。 堂入りした鈴は、2回ないし3回振って直ちに両脇の警固に渡すと、それと同時に別の鈴を持った裸が鈴を振り始めます。 一番觸の青年たちは、二番觸が堂入りしてくるまで鈴振りの厳守事項に従って振り続けます。 二番觸が堂入りしてくると、一時一番觸と二番觸の鈴の振り合わせが行われ、それから一番觸が下される。そのあとは鈴が鳴らないように鈴口を手のひらで押さえながら六ツ石の東側に集合します。

觸れ流し

 集合した青年たちは直ちに白丁を着用し、觸番(一番觸、二番觸、三番觸をする役のこと)の準備と事前に決めてある役割と担当警固および場所の確認を済ませて移動します。 触番の役割は、神輿渡御直前に觸れ榊と觸れ鈴を振りながら総社へ先触れとして走ります。 これを「觸れ流し」と言います。

 一番觸は山神社で先供の世話方が「一番觸」と大きな声を上げて、觸榊を一番觸の榊担当(一番觸では御山の榊という)に渡すと、御山の榊は、渡された觸れ榊を素手ではもたずに、白丁の袖を使い包むように、片方の手で一番觸と記載された紙垂しでを持ち、肩の高さで腕をまっすぐ伸ばした状態で持ちます。 進行方向の左側を、御山鈴は堂入りした鈴を手首で細かく「シャラ、シャラ」と振りながら右側で、御山の榊と御山鈴を先頭に斜め後ろに警固、その後ろには白丁を着た青年および中高生(今後の勉強のため)を付き従いながら大きな声で「一番觸」と連呼しながら見付天神の丘陵を下り、権現小路出口、中川橋手前、総社参道入り口と引き継がれます。 総社参道入り口では、総社に触込みの鈴役が鈴をもって待機し、中川橋手前で引き継がれた御山の榊と御山の鈴は西觸れ流し役に引き継がれ、河原一縷儀の門榊の前にある榊台に納めます。 その後は鈴口を手のひらで押さえながら総社石段東側に待機している一番觸と合流します。

 神輿が総社拝殿に据えられると、煙火が打ち上げられそれと同時に大祭で振った鈴を一斉に振りながら総社参道を右折して一番觸の会所へと戻ります。 会所に着くと自治会の役員、老人会、町民の方々が裸衆を出迎えてくれます。

 結びに、こうして本祭が最後まで無事にかつ盛大にできるのも一番觸保存会、自治会の皆様、今まで一番觸の祭を支えていただいた諸先輩の方々によるものであり、ご指導、ご協力に感謝しています。